久保田一竹氏ご挨拶

私が池口さんと知り合ってかれこれ20年になります。
その頃池口さんは既に織り元として立派に事業をされていらっしゃいましたが、現状に満足することなく今までにない独自の作品作りに取り組んでおられました。
どのような作品を作っておられるのか大変興味があり、拝見させていただきました。


観る角度により、時には重厚な色彩をそして時には、宝石のように煌びやかな色彩を放つその織物に、たちどころに魅了されたことを鮮明に記憶しています。これが「佐波理」との出会いでした。


日本の染色は世界に誇れる優れた文化です。とは言うものの、文化は時代に伴い進化してこそその時代に息づくというのが私の持論です。
何事も昔ながらのことをしていては衰退するばかりです。
私は、着物の将来を憂い、1982年に「The Show」という大きな舞台を東京、名古屋、京都、大阪そして岡山で開催しました。
単なる着物ショーではなく、着物をドレスのように纏い、ハイヒールを履き、ふんだんにアクセサリーを身につけた斬新な舞台でした。


このとき随所に池口さんの『佐波理』を使用させて戴きました。以来、数々の舞台を手がけておりますが、『佐波理』は不可欠な存在となっております。
また、11月に亡き母の供養として執り行いました「慈母像開眼式」の折りには、妻、娘、孫全員『佐波理』の帯を使わせて戴きました。
私が知る限り池口さんは、今京都で一番研究熱心な方であり、且つ自身の創作活動において明確な方向性を持っておられる方です。特に「光」に対し、作品がどのように見えるかを研究されてこられました。
陽の光、ステージ上の強い照明、華やかなパーティー会場での照明、更にムード化された淡い照明の元でもその作品の持つ色彩をいかんなく発揮する織物作りに取組まれ、最近の一連の作品群は観る人々の心を捕らえ、着る人々をより美しく引き立てる素晴らしい出来栄えです。
中でも帯地の場合、表面と裏面とに四季折々のデザインが施され、季節を問わず使える帯を商品化され、
未来を見据えた物作りに対する創意工夫が強く感じられます。
私が20年もの間池口さんと交流を続けてこれたのも、こういった池口さんの物作りに対する変わらぬ姿勢があったからだと思います。


池口さんの創作意欲は止むところなく、常に新しい作品作りに挑戦し続け、観るたびに一味違った作品となります。
次はどのような作品ができるのか楽しみにしています。

 

久保田一竹(1917〜2003) 

 

2000年9月「佐波理と永遠に」出版に際し賜った言葉