小林文司氏ご挨拶

不思議なご縁で知合って早や20年程経ちましたが、池口さんを見ていると、古く中国が生んだ哲学者旬氏の思想をあたかも地で行っているように思われてなりません。
彼が自分のおかれた現状を常に冷静に見つめ明日への何かを求め毎日毎日を一生懸命努力している姿には、私たちの年代のものにとって大変うらやましくもあり、また大いなるエールを送りたいものです。
この度長年にわたる地道な物作りの集大成とも言うべき『佐波理と永久に』は、彼がその一点一点に全神経を集中して作り得た賜であり、世の多くの人々に昭和という時代が生んだ佐波理綴の素晴らしさが知れ渡っていく事と、心より期待するものであります。
過去の記念すべき海外展には、常に私も同行致し、現地での反響等を自分の目で見て参った私は、回を重ねるたびに新しい佐波理綴を開発してきた彼の感性と仕事に対する情熱に、芸術を志す私とは、ジャンルは違っても心が通じる接点は常に同じと感じ入ってきたものです。
特に1988年、オーストラリア建国200年祭時に出展された京の名所祭礼作品は、全て私の写真が原画となっており、大変な感動を土産に帰国いたしました。
帰国後の彼の創作意欲は益々火口から流れる溶岩のごとく次々と新しい作品を世にだし、今日では京の雅シリーズが彼のライフワークとして一つの柱となっているように思えます。

桂離宮の桂垣に始まり京都御所南池畔仙洞御所と数え切れないほどの作品を発表し、そのつど新しい組織を考え出していく作品群は一つのドラマでもあり私の写真がこのように出来上がっていく事は、深い感銘と同時に写真作家冥利に尽きます。
私の方も創作するときにより真剣になりますし、元の写真と見比べれば出来不出来は即刻解ってしまうのですから。
自然には無限に色が存在するし、一方織物という性質上無限の色合いを表現することは出来ない、それを池口さんは限られた色数で表現していこうとする、そこに彼のやりがいがあるように思えます。
即ちチャレンジ精神の塊といったところです。

この度の出版に際し、彼の今後が楽しみでなりません。
全くもって私の弟のような又時には息子の一人として常日頃より思っており、今後の活躍を心より期待してやみません。   

 

写真作家 「小林文司」(1916〜2008)

  • 古都保存文化写真協会会長
  • 日本写真協会(J・P・S)会員
  • 英国王室写真協会(R・P・S)会員
  • 米国プロ写真家協会(P・P・OFA)会員
  • 京都府SKY大学写真部常任講師
  • 京都老人大学カメラ部常任講師
  • 京都新聞写真教室常任講師
  • 写真「京展」審査員
  • 京都府立文化博物館運営委員
  • 京都府文化功労賞受賞
  • 有限会社 光芸荘 取締役会長